Light Fantasia

オウカという国には各国から腕自慢が揃う冒険者組合がある。
 名(迷)物補佐官でありながら冒険者でもあるファニィ、美貌の怪力美女ジュラフィス、
健気で超天才児のコートニス、生真面目で世話やき基質のタスク。
 凸凹四人組が織りなすハチャメチャファンタジー!


なろう版

     終焉の闇

       1

 わたくしだって女ですもの。綺麗な物には興味がありますわ。
 綺麗なお花。綺麗な景色。綺麗なお洋服。綺麗な宝石。
 先日取り返してきたタイガーパールという宝石を見せていただいて、わたくし嬉しくなってしまいましたわ。だってとても綺麗な宝石だったんですもの。
 でも台座がちょっとだけ気に入りませんわ。トラさんという動物がその綺麗な宝石、縞模様の真珠を咥えているデザインなんですの。わたくし、このトラさんの獰猛なお顔、あまり好きではありませんわ。ウサギさんやリスさんみたいな可愛らしい小動物が真珠を支える台座にすればよろしかったですのに。そうすればもっと可愛らしくなったと思いますの。
「ああ、間違いなくタイガーパールだな。実物をガキの頃に見た事があるから間違いない」
「実物を知ってる人間の言葉はやっぱ頼りになるわね。一応組合が手配した宝石鑑定士の見立てでも、宝石は間違いなく本物だって事だから、これで依頼の二段階目はクリアね」
 ファニィさんはその宝石をさっと布にくるんでから箱に入れてしまいましたわ。わたくし、もう少し眺めていたかったですのに。
「それでいつジーンに届けるんだ?」
「んー、それはまだ。でも早い方がいいわよね」
 見るものがなくなってしまったので、わたくしは膝に座らせているコートの頭を撫でてあげましたの。コートは少しくすぐったそうにしましたけれど、可愛らしく笑ってわたくしを見上げてきましたわ。
 うふふ。やっぱり綺麗な物を見るのも楽しいですけれど、コートとこうやってスキンシップしている方がずっと楽しいですわ。

「あ。でもあんた、ジーンに帰って平気なの?」
「……え、あ……どう、すっかな……」
 タスクさんは少し困ったように口元を押さえて俯きましたの。
 わたくしの気のせいかもしれないのですけれど、タスクさんは最近少し、表情が暗くなったように思いますの。何か難しい事を考えていらっしゃるのかもしれませんけれど、わたくしが心配する事ではないのかしら?
「……そうだな……やっぱり……俺は外してもらいたい、かな。その……できればしばらく……仕事は全面的に遠慮させてもらいたい」
「どうかしたの?」
「その、ちょっとな。魔法が……いや、魔法の修行、ちょっと集中的にしたいと思って。やっぱりこういうのはちょっと身勝手かな、俺」
 タスクさんの言葉を聞いて、コートがわたくしの膝の上で体を固くしましたわ。あら? コートはタスクさんの考えていらっしゃる事が分かるのですかしら?
 ファニィさんは小首を傾げてタスクさんをじっと見ていますわ。タスクさんは居心地が悪そうに視線を逸らしましたの。
「ミサオさんにも会いたいからあたしたちが届けようかと思ってたんだけど……タスクが気乗りしないんじゃ仕方ないわね。他のチーム当たってみるわ」
 ファニィさんは腰に手を当てて溜め息を吐かれましたわ。
「悪いな、勝手言って」
「随分控えめな物言いね。いつものあんたならもっと噛み付いてくるのに」
 ファニィさんが挑発なさいますの。でもタスクさんは何も言い返しませんでしたわ。
 あらあら。わたくし、ファニィさんとタスクさんのお元気で賑やかな掛け合いが好きでしたのに。今日は随分あっさりですのね。
「ねぇコート。タスクさんのお元気がちょっと足りないと思いませんこと?」
「あ……えと……そ、そうですね。でもタスクさんがご相談してくださらないことを、僕たちが無理に聞き出すなんて失礼です」
 言われてみればコートの言う通りですわ。話したくない事は話さない、話したい時はいつでも話し相手になる。これがわたくしたちでしたもの。
 でも……どこかギクシャクした空気。波長の合わないタスクさんとファニィさん。なにも言ってくれないコート。
 わたくし……こんな雰囲気、嫌ですわ。
「ねぇタスクさん、ファニィさん。皆さんでお茶にしませんこと? わたくし少しおなかが空いてしまいましたの。美味しいお茶とケーキを食べれば、皆さん元気になりますわ」
 名案ですわ。わたくし、今とてもいい事を思い付きましたの。やっぱりお茶の時間は大切ですわよね。
「相変わらず食べる事ばっかだねー、ジュラは」
 ファニィさんが肩を竦めて笑いますの。
「あら、人はおなかが空いていると元気も出ませんわ。お食事とおやつはとても大切なんですのよ」
 わたくしが説明すると、タスクさんが膝に両手を付いて椅子から立ち上がられましたわ。
「よし、じゃあ食堂に集合な。ケーキは焼いてる時間はねぇけど、買い置きのマドレーヌくらいならあったはずだから」
 そう仰って、一人先にお部屋を出て行こうとされましたわ。でもドアの所で立ち止まって、肩越しにわたくしの方を見られましたの。わたくしが首を傾げると、タスクさんは小さく笑って手を挙げましたわ。そして会議室を出て行かれましたの。
 今のはどういう意味だったのでしょう? わたくし、ちゃんと言葉で言っていただかないとよく分かりませんわ。でもコートの事ならわたくし、何でも分かりますのよ。だってコートはわたくしの自慢の弟ですもの。

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