Light Fantasia

オウカという国には各国から腕自慢が揃う冒険者組合がある。
 名(迷)物補佐官でありながら冒険者でもあるファニィ、美貌の怪力美女ジュラフィス、
健気で超天才児のコートニス、生真面目で世話やき基質のタスク。
 凸凹四人組が織りなすハチャメチャファンタジー!


なろう版

       2

 お屋敷の中は、タスクさんのお父様の魔法で一定の気温になるように空気の暑さを調節されているんだそうです。だから外よりずっと過ごしやすかったのですね。魔法ってやはり、僕のからくりよりずっと便利なものかもしれません。
 タスクさんのご両親や、ミサオお師匠様が、どうしても見送りたいのだけれど、でも用事で手が離せないのでお昼過ぎまで待っていてほしいと仰られ、僕たちはお屋敷で思い思いの時間を過ごしていました。でもなんとなくリビングに、集まってきて、お話する事にしました。やっぱり人様のお家だと、ちょっと落ち着かないです。
「茶でも持ってくるか?」
「もうおなかタプタプだよ。それにもうすぐお昼だし」
 お話といっても、特に話題がある訳ではありません。ですからちょっとだけ、暇を持て余していました。
「見送りとか、そんなに気を使ってもらわなくても大丈夫なんだけど」
「いやまぁ、お前らは一応タイガーパールと俺の恩人だし。親父たちの気持ちも汲んでやってくれよ」
「いいけど……」
 ファニィさんが両手を膝の上に乗せて、暇そうに指をポキポキ鳴らしていらっしゃいます。
「……タスク、考え直さない?」
「しつこい」
「でも……」
「俺の決心は変わらない」
 タスクさんとファニィさんが、先ほどから小声で何か言い争っていらっしゃいます。いつもの口喧嘩とは少し違うような……。
「あの……ファニィさん、どうかなさったのですか? タスクさんに何か質問でもあったんでしょうか?」
 僕はつい好奇心で問い掛けてみました。
「うん、まぁね。こいつってさ、あたしが一世一代の大決心して告ってやったってのに、へらーっと笑いながらお預け突き返してくるんだもん。タスクだってあたしを特別な目で見て……あ!」
「うぐっ!」
 ファニィさんが仰った言葉に、タスクさんの顔色が変わります。ファニィさんも慌てて口を塞ぎ、でもすぐ僕の前で両手をブンブン振ります。
「違っ……違うの! ちょっと勘違い! あたしの気持ちはどうだってよくて関係なくて、コートの応援ばっちりしちゃうからっ! 任せといて!」
「ちょっと待て! 俺はノーマルだと何度言わせ……」
「……あの……僕、知ってます……けど……」
 僕はちょっとだけおかしくなって、短くため息を吐いて答えました。
「え? 知ってる、って……?」
「その……ファニィさんとタスクさん。お互いを好き合っていらっしゃるのですよね? 知ってます。というか、丸わかりです」

 僕、タスクさんが好きです。ファニィさんも本当の姉様のように好きです。だからお二人が惹かれ合っているのなら、僕は静かに見守るだけです。それに僕には大切な……ですもん。
「いやっ、そのっ……そうじゃなくて! だからコートから盗っちゃうつもりじゃなくて……えとえっとぉ……ごめんっ!」
「おおお前は可愛いよっ! うん、弟として! 俺ノーマルだしっ!」
 タスクさんとファニィさんの狼狽ぶりが少しおかしいです。僕、つい笑ってしまいました。お二人がきょとんとして僕を見ていらっしゃいます。
「僕の事なら気にしないでください。僕、タスクさんとファニィさんならいいと思ってますから」
「お前……マジで?」
「だってコート、タスクの事が好きだったんでしょ?」
 僕は膝の上の鞄をぎゅっと抱き寄せ、くすっと笑いました。
「はい、今でも大好きです。でも、なんかもういいかなって」
 だって僕には……。
「僕にはもっと好きな人、いますから」
 ファニィさんが両手をご自分の頬に沿えて僕に詰め寄ってきました。
「わっ! それってコートの新しい恋? それともエイミィ? あ、市場のコハク君? どんな子? どんな子がコートの新しいお気に入り?」
「ふぁっ……そ、それ、は……恥ずかしいから秘密です!」
 僕は顔が熱くなって、助けを求めて姉様の腕に抱き付きました。そうですよね、姉様?
「ファニィさん、コートはわたくしの自慢の弟ですのよ」
「姉様は僕の自慢の姉様です」
「はぐらかさないでよー」
 これだけは絶対にファニィさんにもタスクさんにも言えません。僕、今度こそ本当の本当の好き≠ネんですもん。
「僕は諦めます。だからファニィさんのこと。悲しませちゃイヤですよ、タスクさん?」
「お、おう……」
 タスクさんの褐色の肌が、ほんのり赤く染まります。そのまま口元を押さえて顔を背けられました。照れるタスクさんも素敵だと思います。
 ファニィさんは僕にはいつもお姉さんぶるのですけれど、でも今はすごく照れていらして、可愛らしくていらっしゃるんです。そういった素直で照れていらっしゃるファニィさんも、とてもいいと思います。
「あ、でも……ファニィさんと仲良くなっても、僕とも今まで通り仲良くしてくださいね」
「ああ、そりゃ間違いないな。コートもジュラさんも、ファニィも、俺にとってはかけがえのない仲間だよ」
「うふふ。みんな仲良しさんですのね。わたくしも仲良しさんは嬉しいですわ」
 姉様が僕の頭を撫でてくださいました。
 ファニィさんとタスクさん。素敵な人同士が幸せになるのって、僕もすごく嬉しいです。タスクさんとは今日でお別れですけど……でもきっとまた会えますよね? 僕もファニィさんも姉様も、信じて待っています。

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